<聖母被昇天> ティツィアーノ

聖母被昇天
聖母被昇天

ティツィアーノは、この大作をヴェネツィアで最も重要な聖堂の一つであるサンタ・マリア・デイ・フラーリの祭壇画として描いた。

聖母が金色の光を浴びて昇天する姿を地上の使徒たちが驚きの目で見つめる。

この劇的な場面は、ティツィアーノの華麗な色彩によっていっそう強調されている。

二人の使徒の着ている赤いローブが構図を下から支え、聖母の真紅のガウンと、頭上にいる聖父のマントに同系色が繰り返されることで、構図全体に上昇する力を与えている。

<聖母被昇天>(1516年~18年)

 

ティツィアーノ・ヴェチェリオ(1485年~1576年)

ヴェネツィア派最大の巨匠であるティツィアーノは、ヴェネツィアの最盛期にこの町の画壇に君臨した。前世代を代表する画家、ジョヴァン・ベリーニの工房に学び、1516年にベリーニが没した後は、ヴェネツィアにはティツィアーノの地位を脅かす競争相手はいなくなり、その後、死を迎えるまでの60年間、確固たる地位を保った。ヨーロッパの王侯貴族もまた熱心にティツィアーノの作品を手に入れようとした。

ルネサンス期の数多くの芸術家が、多分野にわたって才能を発揮したのに引き換え、ティツィアーノは画家一筋で通した。

彼の残した作品は膨大な数にのぼり、それらはあらゆる主題において秀でていた。官能的な神話画、深い感動を与える宗教画、古今の肖像画の中でも最高傑作といえる作品などが数えられる。90歳で亡くなった時、ティツィアーノは裕福な資産家であり、ヨーロッパで最も名を知られた画家であった。